今週末から五輪の会場でもあったイタリアはトリノ・パラヴェーラにてグランプリファイナルが始まります。日本からは男子の高橋選手、女子の浅田選手・中野選手が出場します。素晴らしい演技を期待したいです。
女子シングル
キム・ユナ選手
 彼女の武器はスピードと何といってもジャンプ。正確な踏切と膝・足首の柔らかさから普通にランディングできれば確実に加点が見込めそうです。大きな得点源である3F−3T,2A−3Tのコンビも安定しており失敗があまりありません。加えてジャンプ以外の要素においてもレベルの取りこぼしが少なく、ジャンプのミス以外ではめったにGOEでマイナス評価を受けることがない、技術的に欠点の少ない選手といえそうです。出場他選手と比較すると柔軟性で劣る部分がありますが、レイバックスピンにおいてビールマンまで高速回転を保つことができる点などから見ても豊富な練習によりその欠点をカバーしています。大崩れは考えづらく、金メダルの有力候補かもしれません。
浅田真央選手
 流れるようなスケーティングの美しさにおいて現段階で彼女の右に出るものはいないかもしれません。うまく表現できないんですが一つ一つの音を拾ってポーズをとるのではなく、長いフレーズの中で常に体制を変化させ続けながら音楽を表現する能力に長けていると感じます。今季のFSが『幻想即興曲』と聞いたときはアレグロアジタートのパートはどう考えてもフィギュアには難しいと感じ、うまく表現できるか疑問でしたが、演技を観た今となっては彼女にふさわしい見事な選曲だな、と思っています。技術的な側面から見ると、ジャンプにおいては非常に短い助走で(複雑なステップの直後に)高さのあるジャンプを跳び、空中で完全に回転を終え身体を開いた後に安定した着氷が出来る選手だと思います。単独のLz・Fに関しては現役選手で最も回転不足になる可能性の低い選手の一人だと思います。昨季からの課題であるスピン・スパイラルでのレベルの取りこぼしを最小限に抑え、今季の2大会でやや不安な面を見せている3A、3F−3Loコンボをうまくこなすことが出来ればキム選手と互角の戦いができそうです。
キミー・マイズナー選手
 彼女がメダル争いに加わることが出来るか否かは、3−3の認定にかかってきそうです。今季試みたものは全て半回転ちかく不足しており、同程度の出来ではコーラーがいかに甘くてもトリプル認定は厳しいかもしれません。
カロリーナ・コストナー選手
 爆発的なスピードとスケーティング技術・正確な踏み切りのジャンプの持ち主で、キム・浅田両選手をも封じ込めてしまう可能性もありそうな選手です。しかし同時に非常に不安定な選手で、ダントツで最下位となる可能性も否定できない選手です。地元の観衆の声援を力に変え満足のいく演技を期待したいです。
中野友加里選手
 彼女は練習通りの実力を試合で発揮する能力にかけては素晴らしいものを持っていると思います。彼女が大崩れする姿は想像できません。彼女らしい、攻めの演技で上位を目指してもらいたいです。
キャロライン・ジャン選手
 ジャンプは踏み切り前の手足の動作が大きく、癖のあるトゥの突き方をしますので大きな加点は望めませんが、構成そのものは上位選手に引けをとりません。他者の追随を許さない美しいスピン・スパイラルの加点でカバーできれば高い技術点が期待できそうです。スピード・スケーティング技術は現段階ではトップ選手に及ばないかも知れませんが彼女の年齢を考えれば仕方のないことなのでしょう。