フリップジャンプのエッジエラーがどのような状態であるかを理解するのに非常に有用な動画Youtubeに投稿されています。
 この動画は、画面左下の『WRONG ICE MARKS』の文字が示すように、“氷上に残された軌跡”によってエッジエラーを見極めようという意図で作成されたものだと思います。この動画の“ICE MARKS”を少々大げさにしたものが下の図です。

 モホークスリーターン(黒線)の後、インサイドのカーブ(青線)を描いています。このカーブを維持したまま踏み切れば正しいフリップジャンプですが、トウを突く直前にアウトサイドのカーブ(赤線)にチェンジエッジをし、そのカーブに乗った状態でトウを突いているのがわかります。
 “誤った氷上の軌跡”がどういうものかを確認いただいた後は、いよいよ本題、キム・ヨナ選手のフリップジャンプについてです。私の保存している映像で彼女のトリプルフリップ(3F−3T)の軌跡がはっきり確認できるものは、06スケートカナダSP(0:30)、07世界選手権SP(4:11)、そして今季初戦のスケートアメリカFSです。これまで述べてきた氷上の軌跡からのアプローチからの結論は、06〜07シーズンの2大会のフリップは正しい軌跡、今季スケートアメリカのフリップは正しくない軌跡、です。正しい、とした二つのジャンプは、インサイドのカーブをしっかり維持したまま踏み切っていることが分かります。対して、今季のスケートアメリカFS(6:45)のジャンプでは、図に示したほど明確ではないですが、わずかにアウトサイドにカーブが揺れていることが確認できます。参考動画を上げます。
 ?0:11〜0:13で描かれているインサイドのカーブの“外側”にトウを突いている。?スケーティングレッグは突いたトウの左側を通過する。??の理由により、この動画はキム選手がアウトサイドのカーブを描いたことを証明していると思われます。しかし、キム選手の描くカーブの度合いは多くのエラー持ちの選手のような見た瞬間に(肉眼・等速で)はっきりエラーと判別できるものではないと思います。中国杯SPでの“e”判定は厳しいかな、ついても“!”ではないかな、というのが正直な気持ちです。
 自分でも少々細かすぎるかなと思いながらの検証でした。もちろん、キム選手が現役選手の中でトップクラスのトウジャンプの質の持ち主であることは疑いの余地はありません。この悪い癖(といっても私はほとんど気にならないのですが)を修正し、完成度の高いプログラムにより磨きをかけてファイナル以降の試合に臨んでもらいたいと思っています。
PS.危惧したように、何ともまとまりの無い内容になってしまいました。キム選手の判定、ルッツ・フリップの違いについてはあくまで個人的な見解ですので参考程度にとどめていただきたいのは前回申し上げたとおりです。