全日本選手権(男子)

いよいよ25日から長野の地において全日本選手権が始まります。多くのシニア選手にとってシーズン最大の、また、ISU選手権大会を目指す選手にとっては前半最大の目標となる大会といって良いと思います。男女シングル共に世界選手権での日本の枠は3。代表の座をかけて例年、熾烈な争いが繰り広げられています。ここで、世界選手権代表選考基準を今一度確認しておきましょう。
全日本選手権の上位2名を選出する。残る1名は全日本選手権の順位・内容、当該シーズンの国際大会のベストスコアとその内容を総合的に考慮した上で選考する。ただし、グランプリ・ファイナル・メダリストは最上位1名のみを強化部推薦とする場合がある』
となっています。先に行われたファイナルの結果を受けて、小塚崇彦(銀)・浅田真央(金)両選手は代表が内定しています。
小塚崇彦選手
 今季大躍進の最大の原因は、ジャンプの安定にあると断言していいでしょう。昨季までは、ジャンプの着氷でやや前方に重心が残ってしまうことが多く、それによって流れが寸断され、コンビネーションで予定していたセカンドのトウループジャンプをつけられなかったり、ダブルになってしまったりすることが多く見られました。それが今季は、ファーストジャンプでしっかりと流れを出し、きっちりとトリプルトウループをつけ、加点をもらえるだけの精度に高めることができたのは素晴らしいことだと思います。ジャンプでのミスを最小限に抑えれば世界で十分戦えるだけの技術点を叩きだせることは、ランビエール・バトル・ウィアーといった錚々たるメンバーの中で最高のTESを獲得した昨季ロシアカップFSで証明済み。昨季世選8位、今季GPS1位・2位、ファイナル2位としっかりと結果を残したこともあり、演技構成点においても着実に評価を高めつつあります。織田選手との対決が楽しみです。
織田信成選手
 小塚選手の前に大きな壁として立ちはだかりそうなのが織田選手。ジャンプの際に、空中で少々軸が傾いたところでそれを全く感じさせない驚くべき流れを生み出す膝と足首の柔らかさは健在です。ジャンプの課題(私は織田選手のルッツの軌道には問題があると思っているのですが、エラー判定を受けていないのでISUは問題ないと判断しているようです)である、4回転のトウループも、加点つきの認定をいつもらってもおかしくないレベルに仕上がっています。確か、数ヶ月前に見た練習映像では明らかに回転が足りていなかったように感じられたのですが、NHK杯の公式練習・FSで見せた精度まで高まるとは想像していませんでした。効率の良い、充実した練習が消化できたのでしょう。
 その他の選手は、小塚・織田両選手に演技構成点で大きく差をつけられることが予想され、両選手に余程の崩れがない限り逆転は難しいかもしれません。南里・無良・中庭各選手達の代表の切符をかけた激しいメダル争いは、誰がミスを最小限にとどめるかによって決してくるかもしれません。バンクーバー五輪後のスケート界を中心となって担うジュニア選手達の活躍も楽しみです。