全日本選手権(女子)

 間違いなく現在世界トップのレベルにあるといえる女子の争いは男子にも増して激しいものになりそうです。中野(シーズンベスト、GPS・GPFの成績により代表選考で一歩リードしているといえるでしょう)・安藤・村主・鈴木各選手が二つの椅子を奪い合う展開が予想されます。どの選手もいくつかのミスがあった上でも世界選手権で入賞(165点前後)する力があることを今季GPSで証明しています。この四選手は、想定される得点のレンジも重なる部分が多く、順位の予想がつきません。05年のような名勝負を期待しています。
浅田真央選手
 ファイナルで見事優勝したことにより、結果を待たずして世界選手権代表の座をほぼ手中にしている浅田選手。とはいえ、三連覇へのプレッシャーや現世界女王としての大きな期待を背負っての演技となります。決して楽な精神状態で試合に臨めるわけではないでしょう。先日のインタビューでは、バンクーバー五輪のことを今は考えていないとのコメントがありましたが、陣営は今季のFSプログラムで浅田選手がどこまでの成果を上げることが出来るのかを分析し、その結果によって来期プログラムの構成を決定しようとしているのだろうと思います。今季FSがお休みどころのない内容になっている要因の一つに、トリプルアクセルを続けて入れるため、ジャンプの間に息を整える時間を設けていることがあると思います。1回目のアクセルの後に、リンクをいっぱいに使った8の字(この移動距離は相当なものです)を描き2回目の大技に挑んでいます。ここで消費した時間が以後の要素の密度を濃いものにし、更に体力の消耗が後半に影響して、3F−3Loのコンビネーションジャンプの成功を困難にしているのではないかと想像しています。トリプルアクセルは他の予定のジャンプから簡単に変更できるようなジャンプではなく、プログラムの作り(体力配分)そのものに大きな影響を及ぼす技だといえるでしょう。ここからの3試合(全日本・四大陸・世界選手権)の内容で来期のプログラム構成が決定するという側面もあると思います。今大会では、後半のジャンプをどこまでまとめられるかに注目しています。
中野友加里選手
 今季グランプリ3戦で、その安定感を存分に見せてくれた中野選手。彼女は、常に練習の成果を試合で発揮してくれていると感じています。やや、ルッツジャンプに不安があるようですが、ここ一番での強さは何度も証明済み。これまで通りの演技をみせてもらいたいです。
安藤美姫選手
 良い意味でも悪い意味でも予測のつかない安藤選手。ファイナルでのプログラム変更は私の中では悪い方に出てしまいました。私が感じる表現面での安藤選手の魅力の一つに、肩の根元から指先までが連動した腕の動きで曲のアクセントに合わせて決めのポーズをとる一瞬の変化(うまく表現できません)があるのですが、新プログラムではなぜそのタイミングでその動きをするのかが理解できない部分が多くありました。短期間での変更ということで滑り込みが足りていなかった部分も大きいと思うのですが、現段階では完成形が想像できないでいます。昨季全日本でのカルメンは、GPSでの演技からの劇的な変化も手伝ってか、その衝撃・感動はすごいものがありました。あのようなサプライズが再び感じられることを期待しています。
村主章枝選手
 今季、GPS二戦で表彰台に乗り復調を遂げた村主選手。それでも、全日本のメンバーはGPS以上の強敵です。他選手と比較するとジャンプ構成でやや劣る彼女にとっては、一つ一つのジャンプをきっちりと決めていくことが重要だと思います。特に、FS後半のジャンプが抜けるミスは技術点に与える影響が大きく、これを減らさないと(演技構成点がどのくらいの数値となるかにもよりますが)代表争いで五分の勝負には持ち込めないかもしれません。
鈴木明子選手
 数少ないチャンスをものにして、代表争いに名乗りをあげた鈴木選手。美しいスケーティングの持ち主かつ、各要素においても欠点の少ない選手で、是非、ISU選手権に出場し、彼女のスケートを世界中の人々に見てもらいたいです。しかし、それには大きな壁を越えなければなりません。今の鈴木選手にはそれを成し遂げる力があると思います。