エリック

結果詳細
キム・ヨナ選手
 SP・FS共に、スローテンポをメインとした作りのプログラムは、初見のインパクトという意味では、昨季のほうが強いものがありました。激しい振り付けを控えめにして、体力という彼女の弱点を補うべく作成されたのかな、と思っています。とはいうものの、ステップ・スケーティング動作から入っていないジャンプはフリー最後のダブルアクセルのみ。ジャンプ後にも振り付けがふんだんに施され、密度は昨季よりも濃くなっているように思います。ミスを最小限に抑えれば、確実に点数の伸びる難しいプログラム。それを初戦から付け入る隙のないまでにこなしてしまうのですから見事の一言。(FSで丸々抜かしてしまったフリップジャンプですが、スローで確認したところスリーターンの瞬間にトウが溝か何かに引っかかって飛び上がってしまっていました。残念なアクシデントです。)フリーのステップがやや密度が薄いように感じ、構成を確認してみたのですが、全種類のターン(片足:ロッカー・カウンター・ブラケット・スリー・ツイズル・ループ、両足:チョクトゥ・モホーク)がしっかり両方向に入っていました。緻密に計算されていると感じました。
浅田真央選手
 SPの『仮面舞踏会』は、昨季FSの振り付けの多くを採用。跳び慣れたタイミングでトリプルアクセルからのコンビネーションの成功率を上げるためなのかな、と想像しています。浅田選手のトリプルフリップおよびダブルアクセルは鉄壁の成功率を誇りますから、冒頭のコンボさえ決まれば、残りの要素は不安なく伸び伸びと演じることができるのでしょう。レイバックは基本ポジションで8回転を導入し、レベル4の構成に強化。
 フリーは、密になったつなぎが評価され、これまではSSが突出して高い傾向が強かった演技構成点の5項目が他選手比で平均化されたと思います。現段階ではやや、滑り込みが足りていないと感じ、また、浅田選手はスロースターターですから、これから試合を重ねるごとに評価が上がってくるものと信じています。今回のFS構成でジャンプミスが無かったと仮定して技術点を計算してみると、70点前後になります。キム選手の抜けたフリップジャンプが決まったと仮定すると、キム選手の技術点は約74点。この4点の差を埋めるにはどこかでセカンドトリプルが欲しいところ。
中野友加里選手
 昨季のスケートアメリカでもそうでしたが、怪我や練習の不調が伝えられる中での中野選手の精神力の強さには、ただただ感服するしかありません。FS前には少々待たされる場面があったのですが、名前をコールされる直前の気合の入った表情には大いに頼もしさを感じました。表彰台に登ったことにより、ファイナルへの挑戦権を死守。

織田信成選手
 優勝おめでとう。悔しさの爆発したショートの演技構成点ですが、滑走順(第一グループ)の影響もあったのでしょう。第二グループの得点が伸びなかった理由の一つに織田選手との比較があったことは間違いないと思います。あの涙を見て、織田選手は本気で五輪王者を狙って闘っているんだな、という思いを一層強くしました。その構成点も、フリーでは、演技を寸断するようなミスの無かったベルネル選手を抑え、しっかりと評価されました。後は、4回転ジャンプを入れてクリーンな演技をすること。今季は、プルシェンコランビエール・高橋各選手が復帰。どの選手も高確率で4回転を成功させ、高い演技構成点をたたき出す猛者です。また、ベルネル・ジュベール両選手も4回転をフリーに複数回投入するという意欲的な構成。本調子の彼らと五分に渡り合うには240点では足りません。今大会での優勝によりファイナル進出はほぼ手中にしたといっても良いでしょう。中国杯での挑戦・更なる飛躍が楽しみです。