ロステレコムカップ(男女フリー)

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男子
 エフゲニー・プルシェンコ選手が復活優勝を果たしました。SP・FS二度の4−3コンボは軽々と成功。特に、SPでの4回転は、ライブでの画質の悪い映像ではスローリプレイでさえ、私にはトリプルにしか見えなかったほどです。回転速度と軸の取り方が凄まじいと思います。踏切前のスリーターンの回転力をそのまま生かし、トウを突いた瞬間にはもう軸が出来ていて離氷時にはトップスピードに達しているという感じでしょうか。高さがそれほど感じられなく、私の好きなタイプのジャンプではないのですが、非常に効率の良い、リスクの少ないジャンプなのだろうと考えています。ショートでルッツが抜ける大きなミスがあり、フリーでも余裕を残したジャンプ構成でのこの得点が、他選手に大きな圧力をかけることは間違いないように思います。ただ、全体を通してのつなぎの薄さは、尋常ではないSS(8.00)からのTR(6.95)の落ち込みにもはっきりと表れています。対照的なプログラムであるチャン選手との演技構成点の比較をしてみたかったので、彼の欠場は残念でした。
 小塚崇彦選手が二位。SP・FSで3度レベル3となっているスピンは全てシットの前屈(パンケーキ)ポジションでのチェンジエッジが不十分とみなされたのだと思います。今季、規定の一部変更によりチェンジエッジの認定がやや厳しくなりましたが、小塚選手は昨季、何ら問題のない出来でこなしていました。勿体無いミスですので次回までにきっちりと修正しなければなりません。次は、今季男子屈指の好カードとなるNHK杯。今季、男子はプルシェンコ選手・チャン選手が一戦のみの参加予定ということで、ファイナルのハードルは例年よりも低くなることが予想されます。調子を維持・向上させ、表彰台に上ってもらいたいです。
女子

 優勝、おめでとう。とはいえ、SP同様、スピードを抑えて一つ一つの要素を丁寧にこなしているという印象で、全体的に覇気が感じられませんでした。また、バンクーバーで表彰台争いをするであろう他選手と比較すると、このままではつなぎの要素を中心に演技構成点で遅れをとってしまうプログラムだと思います。キム選手・ロシェット選手の早い仕上がりを見ると焦ってしまうのですが、これは常に完璧に近いものを求める一ファン(もちろん私)のわがままな視点であり、試合後の「練習不足」とのコメントからも分かるように、目標(全日本・五輪)から逆算して順調に調整が進んでいるものと考えています。彼女のシーズン後半に向けての調整能力の高さはここ数年しっかりと見せてくれていますから、無用な心配ですね。フリー後半のルッツ、加点1.0ですか・・・もう少しいただけても良いように思うのですが。

 ワグナー選手にぴったり合ったプログラムだと思います。ジャンプの準備動作の短さは天下一品。逆回転であることもあり、ルッツの判別に一苦労ですが。(通常、ルッツはジャンプの回転とは反対のターンから、フリップはジャンプの回転と同じターンから入ります)前後の流れ・プログラムの雰囲気を損ねることなく踏切り、着氷するジャンプは、彼女が将来、現採点システムから好まれ、高い評価を受ける可能性を大いに示しています。SP・FS共にレベル3に止まったスパイラル、私には理由が分かりません。

 見ていると楽しい気分にならざるを得ないプログラム。レオノワ選手の個性を最大限に引き出しており、後半から終盤にかけての表情は、教えられて身につくものではないように思います。どの要素も荒削りで完成されているとはいえないのですが、同時に修正の不可能な致命的な欠点も無い選手のように感じています。今後の躍進が楽しみ。バンクーバーのリンクを観衆の熱狂の中踊りまわる彼女の姿がはっきりと思い描けます。

 残念な結果となってしまいました。次戦は全日本となるでしょう。元気な姿を見せてもらいたいです。

荒川静香氏の解説がパワーアップしてる・・・安藤選手の2A−3Tの転倒、3Loの軸の乱れなどをはじめとして、各選手のジャンプミスの原因を瞬時に分析しているところなどは、うなってしまいました。ステップでもところどころで鋭いツッコミが炸裂。それらの内容も、短く的確にまとめられているように思います。各選手の心情分析・調整段階の推測なども、山あり谷ありの選手生活を送った荒川氏自身の経験からくる自然体の言葉で語られ、優れた指導者としての一面も見せてくれています。解説デビュー時にかもし出していた“とにかく何かしゃべらなくては”感はどこかに吹き飛んでしまいました。プロスケーターとして確固たる地位を確立し、自信・余裕が出てきているようです。