スケートアメリカ女子FS

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 荒川静香氏が指摘されたように、大きな得点元となるジャンプでミスを重ねてしまいました。キム選手の3−3のミスは、2シーズンほど前のショートで3−1になってしまったのが最後だったように記憶しています。このミスによって身体が硬くなったのか、練習で入念に確認していたフリップジャンプで転倒。以下のジャンプも本来の流れが見られませんでした。
「ここでミスをして良かったかもしれない」という荒川氏のコメントや、この記事にある「ミスは起こり得ることだし、いい経験になった」というキム選手の話などから考えると、心配はいらないというか、むしろ今大会の経験が、彼女をまた一回り成長させるのだろうと思います。

 最後の足換えコンビネーションスピン(逆回転→順回転)が足換えを挟んだ二つのスピンとしてコールされています。規定(18ページ)を見ると、
(足換えの前後の)スピンの軸が離れすぎ、「2 つのスピン」の基準(第1 部分の後に出(エグジット)のカーブがあり、第2 部分への入り(エントリー)のカーブもある)が満たされる場合、そのスピンの第2 部分はコールされず、レベルの特徴として評価されない。
となっています。確かに“「2つのスピン」の基準”が満たされていると言えそうです。規定では、13番目の要素はコールしないとなっていますが、得点に影響が無いことと分かり易さを考慮してCoSp1をコールしたのだと解釈しています。このスピンは通常の足換えコンボに変更した方が無難のように思います。(これまで足換えとして認定されてたのは何だったんだという話もありましょうが)
 全てのジャンプを降り、試み通りに認定されていますが、着氷はどれもミスと隣り合わせのギリギリのものが多かったようです。更に安定した着氷ができるようになると、技術点もグッと伸びてきそうです。
それにしても、あの馬鹿でかいテロップは邪魔ですね。キスクラで採点待ちの時くらいであれば気にならないのですが、ジャンプのスローリプレイで足元をすっぽり隠されるのは我慢がなりません。

 ルッツからの3連続ジャンプのサードでステップアウトしてしまったのは、そこまでが抜群に良かっただけに勿体無かったと思います。後半の稼ぎどころでジャンプが抜ける彼女の悪い面が出てしまいました。

 SP・FSを通じてジャンプ以外の要素では、全て狙ったレベルを獲得しました。とはいうものの、やはりジャンプが決まらなくては勝負になりません。比較的確率の良いトウループではなくサルコウを持ってきているところや、得意のフリップコンボを後半にしているところなどから、少しでも基礎点を上げたいという意志を感じるのですが、それが空回りして悪い方向に出てしまっている気がします。ただ、ここぞという勝負処で神がかり的な演技をする強靭な精神力の持ち主ですから、全日本では間違いなくピークにもって来ると思います。

  • キム選手の乱調、驚きましたが、3−3が乱れた後にそれを引きずってしまうということは、十分予測できることだったのかもしれません。プログラム序盤の大技の成否が後の要素に与える心理的影響は大きく、それはキム選手にとっても例外ではなかったということだろうと思います。

 これを浅田真央選手にあてはめれば二度の3A、安藤美姫選手であれば3Lz−3Loと2A−3Tということになるでしょうか。両選手とも、今季これまでの構成でプログラム後半にもってきているジャンプでは、転倒したり着氷が乱れたりするようなレベルの選手ではありません。とにかく、序盤の大技(そしてそれと同じくらい大切なのがショート)をきっちり降りた演技が待ち遠しくてなりません。