世界選手権男子

高橋選手が初優勝、おめでとう!!!
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プロトコル SP FS

 冒頭の4回転フリップへの挑戦には、本当にびっくりしました。構えがフリップになった瞬間、トリプルに違いないという先入観、そして“クワドは回避して、しっかりまとめ、とりあえず王座の称号を手に入れて欲しい”という私個人の演技前の(ある意味卑しい)願望のようなものもありました。今回、高橋選手が引いた最終滑走というのは、他選手の出来を知った上で構成を変更できるという意味で、最高の滑走順であり、更に、実際の状況が、4回転を回避した上である程度のミスをしても十分優勝できる点数関係にありました。その状況の中で、4回転を、それもフリップを挑戦するという選択(*1)を高橋選手がとったという現実が、実は今でも信じられないでいます。
高橋選手は確か、「『道』の完成には4回転が必要」という趣旨のコメントをしていたと思います。彼にとっては、世界王者の確率を高めることよりも、『道』の完成型を世界に発信することの方が、価値があったということなのだろうと想像しています。でも、初めてのタイトルですよ、同じ状況で同じ選択ができる選手が他にいるでしょうか?
勿論、冒頭のジャンプが“3F”ではなく“4F<”であったこと、その上で他の要素をほぼ完璧にまとめたことで、その感動は比較にならないほど大きいものになりました。そして、私の味わった感動を世界中のファンの方々も持たれたのではないかと思います。優勝、おめでとう。スピンも最高でした。(何で、最後が引きの映像じゃないの?今大会のカメラワークは結構不満です)
*1
最後のジャンプが2Aコンボであったことから、回避の可能性はゼロではなかったのだろうと思います。

 二度のフリーレッグのタッチダウン、ループの転倒で合計約10点のロス。それ以外のジャンプも本来の流れがないものがありました。チャン選手のジャンプは無駄な動作が無く、質は一級品ですから、トリプルアクセルが安定し、更に4回転を装備できるようになると、手がつけられない選手になるかもしれません。SPは素晴らしかったです。正確に踏んでいるように見えるステップのGOE評価が思うようには伸びません。音楽との同調性やダイナミックな全身の使い方、観客へのアピールなどがGOEに与える影響が大きいのでしょうか。

 二度の4回転を成功させました。しかし、プロトコルを見ていただければ分かりますが、(実質)クワドレス構成の高橋・チャン両選手と変わらない基礎点となってしまっており、『構成面でのロス』が大変大きい演技となってしまいました。

 フリップがデカイ!!その他のジャンプも跳びあがってから回っており、見ていてとても気持ちがいいです。シットスピンがやや見劣りしますが、ブレジナ選手に限らず、スピンの課題は練習を重ねることにより比較的短期間に克服できるはずです。今後の飛躍が楽しみ。
今大会は、オリンピックに続いて、ステップでレベル4が頻発しました。シーズン中はそうではなかったが、最後の最後でレベル4の構成とレベル3の構成で大きく差がついたことになります。また、今季ステップのGOE加点推薦基準が改正されたのですが、追加項目の中の3) 十分に明確で正確 4) 深いはっきりとしたエッジ(全てのターンの入りと出を含む)は軽視され、8) 音楽構造に要素が合っている、が、プラスGOEに与える影響がとても大きいように感じられます。このGOEのつき方には個人的には納得できない部分が大きいのですが、そういう傾向にある以上、それに合わせたステップ構成というのも必要なように感じられます。例えば小塚選手のブラケットやロッカーなどのターン後の重心移動・フリーレッグの処理などは見ていて惚れ惚れし、これに加点しないでどこに加点するんだよ、と思わないわけではないのですが、残念なことにそれが点数につながりづらいとなれば、何かしらの対策を考えなくてはならないのかもしれません。