ISUルール変更2

ISU Communication No.1619
例によって、これは、と思った変更と、それについて思うところを書いてみます。

  • ショートプログラムの要素が7つに減りました。(今季までは8つ)男子ではステップシークエンスが2つから1つに、女子はスパイラルが無くなり、トランジションでの評価となりました。

 今季までと比較して、男子で30秒前後、女子で20秒前後の時間的余裕ができることになります。この時間を、つなぎの要素、レベル獲得が難しくなったスピンや、ステップにあてることになります。ステップにおいては、今季まではレベルが上がるに従って要求内容が厳しくなってた「上体の動き」が全てのレベルで統一され、また、「回転方向の素早い転換」が明確化されたことにより、多くの選手がレベル4の構成にしてくることが予想されます。こうなると、一つ一つのターン・ステップをいかに正確に踏んでいるかがレベル獲得の鍵となりそう。ステップに多くの時間を回す選手が増えるように思います。

 2Aと3Aの基礎点差は、5.2点。トリプルジャンプを一つ余計に跳んでしまう計算になりますから、3Aを組み込む破壊力は凄まじいものがあります。これは、浅田真央選手にとって強力な追い風となりそうです。
トリプルアクセルを入れない、最強構成
 3Lz-3Lo(3T)、3F、2A 基礎点 19.7(18.7)
浅田選手が選択しそうな構成 《 》内は仮に3A<となった場合の基礎点
 3F-2Lo、3Lo、3A 同 20.7《18.2》
 3Lo-3Lo、3F、3A 同 24.0《21.5》
 3F-3Lo、3Lz、3A 同 24.9《22.4》
 最も難易度の低い一番目の構成でも、トリプルアクセルを入れない選手と1.0(2.0)点の差があり、更にジャンプのGOE幅が縮小され相対的に基礎点の重みが増したことにより、3Aが認定されれば圧倒的に優位に立つことになりそう。三番目の構成は、コンボセカンドがループということで一般的な男子選手をも上回る超絶難度で、全てのジャンプで気を抜けない構成であることもあり、ソチ五輪へむけた究極の目標といえるかもしれません。
 過去の解禁例を見てみますと、女子SPでソロジャンプのトリプルが解禁されたのが94〜95シーズン、男子ジュニアSPでトリプルアクセルが解禁されたのが08〜09シーズンだと思います。どちらの例も、かなりの数の選手(特に前者は国際大会レベルであればほとんど全ての選手)がプログラムに組み込むことが予想される状況での解禁であっただけに、この提案が理事会で承認される確率は低いと予想しておりましたので、今回の解禁には正直、驚きました。別の見方をすれば、この変更が近い将来、自国選手に有利に働くと計算している理事国が存在するという考えも出来なくもないように思われ、複数の選手の挑戦が見られるかもしれないという期待を持ちたいです。

  • 男子シニアSPにおいて二度の異なる種類の4回転ジャンプが可能になりました。

 一つはコンボで、もう一つはソロでとなっております。4S−4Tコンボ等は不可ということですね。(って、4−4コンボ出来る人、いませんよね^^)

  • 男子シニアSPにおいて、フライングスピンのランディング姿勢と、単一姿勢のスピンは異なるものでなければならない。

 例として、フライングキャメルスピンと足換えシットスピンの組み合わせが挙げられています。今季世界選手権SPを調べましたところ、シットスピンの88回に対し、キャメルスピンは僅かに4回。昨季、ジュニア男子の指定であったCCSpのレベル認定の低さからも分かるように、キャメルスピンはレベル獲得が大変に難しい姿勢だといえそう。恐らく、現在、男子選手は必死にキャメルスピンの練習をしているのだと思います。(フライングスピンはアップライトも認められていますので、FUSpとCSSpの組み合わせが多くなるような予感もなくはないのですが・・・やっぱり、キャメルがみたいです)

フリーで2Aを3回入れていた選手というと、真っ先にキム・ヨナ選手が思い浮かびます。来季、セカンドトリプルを1回減らし、難易度を下げた構成にするのか、それとも苦手としているトリプルループに挑戦してくるのか、注目です。確率が低いとはいっても、降りたときには幅のある美しいループを持っていますので、是非ともプログラムに入れて欲しいです。
 実は、来季からハーフループのみを挟んだ(今季までの)ジャンプシークエンスはコンビネーションとなることもあり、
 3Lz-3T 2A-3T 2A-1Lo-3S 3Lz 3F 3Lo 2A (基礎点 45.2)
 のような、超攻撃的な構成を試みる選手が出現するのではないかと秘かに期待していたのですが、今回の変更により不可能となりました・・・さすがにここまではないか・・・
 先日の変更であった、中間点の導入・3A以上のGOE減点幅縮小・3Lz以下のGOE幅縮小、今回の変更点である、女子SP3A解禁・FSでの2A回数制限の強化、これらは全て、難しいジャンプにどんどん挑戦しなさい、というISUのメッセージのように思われます。このメッセージを受けて、各陣営がどのような対策を講じてくるのか、来季の本格的なシーズンインを興味深く待ちたいと思います。