前回の日記で述べたソルトレークシティ五輪のスキャンダルにより導入されたジャッジの無作為カット・国籍非公開は新採点方式においても主に大きな国際大会で採用されています。旧採点ではジャッジの出したスコアはその競技者の演技終了時点の『順位』を多数決で決定することを意味していました。極端な話をすれば、24人で競ったとして、23番滑走者に5人のジャッジが1位、残りの4人のジャッジが23位をつけても23番滑走者は多数決で1位になり、24番(最終)滑走者に4人のジャッジが1位、残りの5人のジャッジが2位としても24番滑走者は2位にしかなりません。つまり、旧採点は多数決に敗れたジャッジがどんなに高い(あるいは低い)スコアを出そうとそれは意味のない数字になってしまうということです。
新採点方式は、旧採点方式と異なり、少数派ジャッジの意見もスコアに反映されます。これは、旧採点下では起こりえたスコアの合計点での順位と最終決定順位との逆転現象が発生しないということですが、やはり問題点はあります。その一つとして挙げたいのが、(上下一人ずつはカットされますが)極端な話をすれば(カットされなかったジャッジのうち)残りの全てのジャッジが1位とした選手が、たった一人のジャッジがひどい採点をすることによって順位が入れ替わってしまう可能性があるということです。
私は、『ジャッジの無作為カット』をすることによりジャッジに不当な圧力がかからないようになるメリットよりも、上に挙げた問題点を更に大きくするデメリットの方が大きいような気がします。
選手の中には、ジャッジから平均して評価される選手もいれば、多数のジャッジはさほど評価しなくても少数のジャッジから絶大な評価を受ける選手、その正反対の選手もいます。『無作為カット』には、その絶大な評価をしたジャッジが全て採点の対象外になる可能性があるというこです。この理由で私はこの制度には反対です。
『国籍非公開』については、ジャッジへの不当なマスコミなどからのバッシングを防ぐという意味で有効だと思っています。